Q. 成年後見制度とは何？判断能力低下に備える仕組みを解説

答え

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人に代わり、家庭裁判所が選任した後見人が財産管理や契約手続を行えるようにする公的な仕組みです。

1. 背景・基本的な考え方

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分になった人（本人）の生活と財産を保護するために設けられた制度です。

本人が自分で契約内容を理解できない状態になると、不利な契約を結んだり、詐欺被害に遭っても自力で取り消せないおそれがあります。成年後見制度では、家庭裁判所が選んだ後見人（支援者）が、本人に代わって財産管理や重要な契約の手続を行います。

制度には、判断能力が低下してから利用する「法定後見（後見・保佐・補助の三段階）」と、元気なうちに将来の支援内容や支援者を決めておく「任意後見（公正証書で結ぶ契約）」があります。終活の一環として、任意後見契約を結んでおく人も増えています。

具体的な適用範囲や運用は法律と家庭裁判所の判断によって決まるため、詳細は家庭裁判所や法律の専門機関への確認が望ましいでしょう。

2. 手順・流れ（ある場合）

相談・情報収集を行う。
家庭裁判所、自治体の相談窓口、社会福祉協議会、法律相談窓口などで、本人の状態や家族構成、財産状況に応じた制度利用の可否や種類について説明を受ける。
必要書類の準備を行う。
法定後見では、申立書、本人の診断書（成年後見制度用）、戸籍謄本や住民票、財産目録、親族関係図などを用意し、申立手数料や登記手数料を収入印紙で準備する。任意後見では、公証役場で作成する任意後見契約公正証書のための資料を準備する。
家庭裁判所への申立て・審理が行われる。
申立て後、家庭裁判所が本人や親族から事情を聴き、必要に応じて医師の鑑定を行い、後見・保佐・補助のどれを開始するか、誰を後見人等に選任するかを決定する。任意後見の場合は、本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申立てを行い、任意後見監督人が選任されて契約が効力を持つ。
後見開始後の管理・報告が行われる。
選任された後見人等は、本人の財産の把握と生活状況の確認を行い、家庭裁判所へ財産目録や収支予定表を提出する。その後も原則として年1回程度、収支報告などを行いながら、預貯金や不動産、介護サービスの契約などを適切に管理する。詳細な運用は家庭裁判所の指示に従う必要がある。

3. 費用・期間・持ち物の目安

項目	内容	相場・目安
主な費用	家庭裁判所への申立手数料・登記手数料・診断書料・鑑定料など	申立時に約5万〜15万円前後。任意後見契約では公証役場手数料等で数万〜10数万円程度。
付帯費用	後見人・監督人の報酬、専門家（弁護士・司法書士等）への依頼費用	後見人報酬は月2万〜6万円程度が多く、専門家に申立てを依頼すると10万〜30万円程度加算されることがある。
期間	申立て〜後見開始の審判確定まで	書類準備期間を含めておおむね1〜3か月程度。事案によって前後する。
持ち物	本人・申立人の本人確認書類、戸籍謄本、住民票、診断書、財産資料、印鑑など	必要書類や部数は家庭裁判所や公証役場の案内に従う。

費用や必要書類、審理期間は地域や家庭裁判所、依頼する専門機関によって差があります。
個別の事案に応じた費用と期間の見込みは、家庭裁判所や専門機関への確認を推奨します。

4. 地域・宗派による違い

地域差：地域によって差があります。
宗派差：宗派によって差があります。

成年後見制度そのものは全国一律の法律に基づく制度であるが、介護や終末期医療の希望、葬儀や供養の方法など、本人の価値観や宗教観によって事前に決めておきたい内容は変わることがある。これらを任意後見契約や別途のエンディングノートなどに書き残すと、親族の判断がしやすくなる。

不明点は寺院・霊園・自治体・専門機関への確認を推奨します。

5. 注意点とまとめ

成年後見制度を利用すると、本人の財産管理や重要な契約は原則として後見人等が行うことになり、本人や家族だけで自由に変更できない事項が増えます。そのため、誰を後見人にするか、どこまで権限を与えるかを慎重に検討する必要があります。

また、後見人の報酬や専門家への依頼費用は長期にわたり発生する可能性があるため、本人の資産状況や将来の介護費用も含めて総合的に検討することが重要です。

法務に関わる内容や具体的な手続き、必要書類、費用の最終的な判断は、必ず家庭裁判所や弁護士、司法書士などの専門機関に確認することが望ましいでしょう。早めに情報収集と相談を行うことで、本人と家族にとって無理のない形での備えにつながります。

6. 次の行動

親族・喪主・関係者に、判断能力低下への備えや成年後見制度の利用希望を共有する。
家庭裁判所の手引きや自治体・専門機関のパンフレットを入手し、制度の種類とメリット・デメリットを整理する。
任意後見を検討する場合は、公証役場や専門家に相談し、将来託したい内容と候補者を具体的に書き出してから手続きを進める。

迷ったら、まずはお気軽にご相談ください。無料相談はこちら